春合宿では、アルペン種目の方では大学選手権が全関西と中四国九州の二つの大会があります。更にはスキー場やクラブなどが主催するローカルなレースもあります。
ローカルレースは元国体選手や元大学スキー部出身の速い社会人も出場し、意外にレベルが高い時もあります。その中で二刀流の私はこのシーズンで2回の入賞を果たします。特にスタートからゴールまでいまだにはっきりと覚えているのが、中四国九州学生スキー大会での滑降競技という一番スピードの出る種目です。210cmくらいのスキー板を使用して薄いワンピース構造のレーシングスーツを着用します。この年のコースは大山国際スキー場のリーゼンコースで一番標高が高いところから一番低いところまでの1500~2000mを滑ります。当然コースはレースのみの独占使用で、規制テープが張られて緊張感が高まる雰囲気です。さて、肝心のレースですが、まず我がクラブは予算が少なく滑降用のスキー板を今シーズンは買えませんでした。仕方なく古くてしかも板の先がやや上に曲がっているという、とんでもない板を使うしかありませんでした。追い打ちをかけるようにこれまた予算の関係上滑降用ワンピースは、買えないどころかありませんでした。そこで一計を案じて、なんとクロスカントリー(距離)競技用のワンピースをキャプテンのTくんから借りることにします。(ちょっとどころではない恥ずかしさはありましたが、背に腹は代えられない状況でした)
失うものは何もない状況で、いよいよレースはスタート、序盤部分はやや急な斜面を大回りのターンの連続です。そして壁という通称がつく急斜面へはその手前から直滑降で進入します。一番重力を感じちょっと体が浮く感覚になりますが、このあとの中盤部分は緩斜面もあり、通称廊下と呼ばれるやや直角気味に曲がったり、左右にへびのようにくねくねと曲がったコースを進んでいきます。そして、終盤部分はくねくねの最後からまた直滑降で最後の初心者向けコースまで進むのですが、初心者コースに入る手前にスノーモービルや雪上車や人などが通る幅5mくらいの道があります。(通称夏道)この付近では時速90km以上は出ていますので、その道では踏み切りなしでもジャンプして飛んで行くのです。ここはかなり重要な場所です。なぜなら急斜面での細かいミスはタイムロスがわずかなのですが、緩斜面でのタイムロスは大きくゴールタイムに影響を及ぼすからです。
さてここをクリアするためには事前の準備が必要と判断していましたので、2月から通行する人などが少ない時間帯などを利用し(マネージャーのKさんらの協力もあり)夏道のジャンプを何度も練習しました。踏み切るタイミングと空中姿勢と着地をチェックします。もちろん昨年オフシーズンにはトランポリンでのきついトレーニングもやっていましたし、コースを頭の中で何度もイメージで滑っていましたので、レース当日はほぼ無心で臨めました。
さあレースに戻ります。その道の手前約100mくらいのところから夏道が見え始めますが、その時その道の脇のテープで規制されているところに、なんと練習から協力してくれていたマネージャーのKさんの姿がはっきりと見えたのです!コースはもちろんデコボコがありますので、体は上下動します。したがってその上下動を太ももや腹筋背筋などを使って、バイクのサスペンションのように衝撃を吸収しながら滑るのです。その時コース全体が見えるほどの衝撃吸収状態であったことが、結果につながっていったのがあとからわかりました。ちょっとビデオのスロー再生に近い感覚でジャンプをして、最後の緩斜面を滑ってゴール!!!!!結果は全体の2位。1位とはわずか0.1秒差で1位の選手はよく知っている広島大学のキャプテンでした。お互いに声を掛け合い称え合いました。
「もし」がないのはわかっていてもこの時ばかりは思いました。もしスキー板がまともで、もしウェアが滑降競技用ワンピースだったら?0.1秒差はどうなっていたか、、、
私の競技スキー歴に残る素晴らしいレースでした。この2位の意味を問うより、まずは状況を把握し全知全能状態に少しでも近づくよう熟慮し、全身全霊を打ち込み、全力疾走したことに意味があると思います。38年前の事を日記や写真もないのにこれだけ書くことができるのには自分でもびっくりしています。若い時の強烈な記憶なのでしょうか。
ノルディック種目の話はまた改めて後日に。
このときはリレー競技の結果は8位でした。さて来年は?